August 06, 2013

何ゆえ人は汝にのみ憧る

 シアタークリエにて『宝塚BOYS』を観てきました。ずっと観てみたいと思いつつ、実は今回が初参戦。

 いやあ…泣いた……。顔が元通りにならないくらい泣いた。

 Wikipedia先生によると、宝塚歌劇団男子部は1945年に公募を開始、1954年に解散。とあります。これはその9年間の物語。

 観ながらとても複雑な気持ちになりました。
 彼らの結末はあまりにも苦しくやるせなく無念なのだけれど、しかしじゃあ宝塚男子部がもっと華々しく活躍していたらめでたしめでたしなのかといえば決してそういうわけではなくて
 あくまでも宝塚ファンである私の目線でいえば、宝塚の舞台に男性が立つなんてありえない!宝塚は女性の世界だからこそ美しい!と思ってしまうわけなのです。私が当時の人間だったら、きっとそのころのファンや生徒と同じように、反対の投書を寄せたと思う。
 (この話を観るとどうしても「そもそもなんで男子部を発足させてん!」という疑問にぶち当たるのですが、これは単に一三翁のトライ&エラーだったんだろうなあと思います。実際のところは分からないけど。戦後宝塚歌劇のありかたを改めて模索するなかでひとつの案としてあったのが「男性加入」で、でも結局それを採らない、ということが劇団経営者としての選択だったんだろうなあと)

 この『宝塚BOYS』は、決して当時の劇団やファンや様々な状況を批判したりなじったりしているわけではなく、あるいは男子部の悲劇を単純にかわいそうな悲劇として描いているのでもなく
 その哀しみをはるかに超えた「夢」の美しさを、いっぱいに伝えてくれる作品でした。
 「夢を追う過程こそが夢」とか言うとすごいベタな表現だけど、でも、届かない場所を夢みつづける彼らの姿は真に「夢」そのものであり、そして「宝塚」だった。本当に、彼らのひたむきな美しさはタカラヅカそのものだった。

 劇中でもクローズアップされていますが、彼ら一人一人が戦場の苦痛の記憶、あるいは戦場に行けなかった屈辱の記憶を抱えていて
 それは女性や子供たちとは違う、よりリアルで壮絶な傷だったのだろうと思います。
 実際に戦場へ赴き、肉体に傷を受けた彼らの目に、タカラヅカのレビューがどれほどまばゆく映ったか。
 単に美しいというだけではない、戦後の新しい時代、新しい自由や希望や救済の象徴として、タカラヅカは存在したのではないかと思えました。

 現実には彼らは夢を叶えることができないのだけれど
 それでも、彼らが憧れてやまないタカラヅカという場所の、その圧倒的な美しさときたら。
 舞台に佇む山路さんの後ろから、きらびやかな大階段が現れるあの瞬間は忘れがたい。
 人の夢も希望も、挫折も涙も、すべて飲み込んでなお絢爛と輝くさまは、残酷でもあり、でもやっぱり「我が憧れの美の郷」そのものでした。
 レビューの最後、美しきタカラジャン(笑)たちがシャンシャンを愛おしそうに抱きしめながら袖にハケていく姿がいまも脳裏に焼きついています。あの光景を見ながら、なぜかいつぞやのトークスペシャルで聞いた(しかも又聞きw)元宙組のモチモチの、「シャンシャンの裏側に『百千』って名前が書いてあるのを見ると未だに『私タカラジェンヌなんだ!』と嬉しくなる」という話を思い出していました。いつの世もタカラヅカは「夢」なのであり、それを叶えた人、あるいは叶えられなかった人の「夢」が無数に詰まっているからこそ、私たちはこんなにもタカラヅカを愛してやまないのだなあ、と。あらためて。

 もちろん今もそれが脈々と息づいているからこそ、宝塚歌劇団はめでたく100周年を迎えるわけですが
 しかしもしかしたら今は薄れてしまっている、あるいはどこかで忘れ去られているかもしれない、タカラヅカの源流ともいうべき圧倒的な「夢」の力を、シアタークリエで目の当たりにしました。
 願わくばこの強い美しい力が、現実の宝塚にも、いつまでもありますように。
 現役タカラジェンヌの皆さんや演出家の方々にもぜひ『宝塚BOYS』を観てほしいなーと、老婆心ながら思っている今日このごろです。

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 出演者はまったく存じ上げないまま観にいったのですが、星野役の中垣内さんが超タカラヅカでかっこよくて素敵だった!銀英伝帝国編のミッターマイヤー、という認識しかなかったのですがめちゃくちゃ踊れるんですね。大階段前での「ジェラシー」のダンスソロとか本当に素敵で、「オーレィ」と掛け声かかった瞬間に爆竹拍手しそうになって慌ててこらえました(つ、ついヅカヲタの習性が…)。目線の配り方や指先の使い方もすごくタカラヅカっぽい繊細な色気があって、中垣内さんを観てるときだけは少し涙を忘れて単純にキャーキャーできたのでよかったです(笑)。ほかの皆さんは、絶妙な不器用さ加減がまた愛おしくて泣けてしまってですね…うううう。
 歴代キャストを見たら前回の星野役はロイエンタールの東山さんで、その前は吉野さんなのかー!み、観たかった!
 初風さんと山路さんがまた本当に素晴らしかった。初風さんのあたたかさと、娘役としての可愛らしさ。初風さんをヒロインにしたパリの幻想の場面は、もっとも印象に残った場面のひとつです。タカラヅカって本当に素晴らしいですね。

 ということで、また違うバージョンが上演されたら観にいきたいなと思います。以上!
posted by 白木蓮 at 20:56 | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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